雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除(所得拡大税制)
この制度は、
①青色申告法人が、
②平成25年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度において
③国内雇用者(法人の役員の特殊関係者及び使用人兼務役員を除く使用人のうち、国内の事業所に勤務する雇用者。
具体的には、その法人の国内に所在する事業所につき作成された労働基準法第108条に規定する賃金台帳に記載された者)に対して
給与等(所得税法第28条第1項に規定する給与等)を支給する場合において、
④適用対象年度の給与支給額や平均給与支給額などに基づく一定の要件を満たす場合
には、税額控除が認められるというものです。
ただし、解散(合併による解散を除きます。)の日を含む事業年度及び清算中の事業年度においては、適用できません。
この制度の適用を受けるためには、次の(1)から(3)までの要件を全て満たしている必要があります。
(1) 雇用者給与等支給額(※1)≧比較雇用者給与等支給額(※2)
(2) 次のイの要件を満たすこと
イ 平均給与等支給額(※4) > 比較平均給与等支給額(※5)
*(中小企業者等以外の法人の、平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度の場合については、
次のロの要件を満たすこと)
ロ 平均給与等支給額-比較平均給与等支給額 / 比較平均給与等支給額 ≧ 2%
(3) 雇用者給与等支給増加額(※6)≧基準雇用者給与等支給額(※7)×増加促進割合(※8)
※
1 雇用者給与等支給額とは、
適用年度の所得の金額の計算上、
損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。
(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合にはその金額を控除した金額となります。)
2 比較雇用者給与等支給額とは、
前事業年度の所得の金額の計算上、
損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。
*なお、平成29年4月1日以後に開始する適用年度に係る比較平均給与等支給額が0である場合には上記(2)ロの要件を満たしません。
3 中小企業者等とは、
次に掲げる中小企業者又は農業協同組合等をいいます。
イ 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
ただし、同一の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を所有されている法人
及び2以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を所有されている法人を除きます。
(大規模法人とは、資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち
常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。)
ロ 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
4 平均給与等支給額とは、
適用年度の継続雇用者に対する給与等の支給額として計算した一定の金額を、
その継続雇用者に対する給与等の支給額に係る給与等支給者数として計算した、
一定の数で除して計算した金額をいいます。
継続雇用者とは、適用年度及び前事業年度等において給与等の支給を受けた国内雇用者をいいます。
5 比較平均給与等支給額とは、
前事業年度等の継続雇用者に対する給与等の支給額として計算した一定の金額を、
前事業年度等のその継続雇用者に対する給与等の支給額に係る給与等支給者数として計算した、
一定の数で除して計算した金額をいいます。
6 雇用者給与等支給増加額とは、
雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額を控除した金額をいいます。
7 基準雇用者給与等支給額とは、
基準事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。
基準年度とは、平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度開始の日の前日を含む事業年度をいいます。
8 増加促進割合とは、次の適用年度の開始日の区分に応じそれぞれ次の割合をいいます。
適用年度の開始日 増加促進割合
平25.4.1~平27.3.31 2%
平27.4.1~平28.3.31 3%
平28.4.1~平29.3.31 4%(*)
平29.4.1~平30.3.31 5%(*)
(*) 中小企業者等である場合には、3%となります。
(4) 上記(1)から(3)までを満たす場合
税額控除限度額=雇用者給与等支給増加額(注)×10%
(5) *中小企業者等以外の法人の平成29年4月1日以後開始する事業年度
及び上記(2)ロの要件を満たす中小企業者等の同日以後開始する事業年度の場合
税額控除限度額=(a×10%)+(a又はbのうち、少ない金額×2% 中小企業者等については12%)
a雇用者給与等支給増加額
b(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)
ただし、適用年度の調整前法人税額の*10%(中小企業者等である場合には、20%)相当額が限度となります。
(注)平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度において
特定の地域において雇用者の数が増加した場合の税額控除(旧措法42の12)の適用を受ける場合には、
次の方法により計算した金額を控除します。
雇用者給与等支給増加額から控除する金額=(イ+ロ)×30%
イ 旧措法42条の12第1項又は第2項の適用を受ける場合
適用年度の雇用者給与等支給額/適用年度終了の日における雇用者数×(a*+b*)
ロ 旧措法42条の12第3項の適用を受ける場合であって、かつ、
適用年度開始前に開始した各事業年度において同条第2項の適用を受けた場合
各事業年度の雇用者給与等支給額/各事業年度終了の日における雇用者数×b*
a* 特定地域基準雇用者数
(適用年度開始の日において、地域雇用開発促進法の同意雇用開発促進地域内に所在する法人の事業者において、
その適用年度に新たに雇用された無期雇用かつフルタイムの雇用者で適用年度終了の日において
事業者に勤務する者の数
(その数が当該事業所のみを当該法人の事業所とみなした場合における当該適用年度の基準雇用者数を超える場合には、
その超える部分の数を控除した数)
として所定の証明がされた数をいいます。)
b* 地方事業所基準雇用者数
(適用年度開始の日から起算して2年前の日からその適用年度終了の日までの間に
移転型計画の認定を受けた法人のその計画の認定に係る特定業務施設のみをその法人の事業所とみなした場合における
基準雇用者数として所定の証明がされた数の合計数をいいます。)
(6) 本制度の対象となる期間内に新たに設立された法人であっても、適用を受けることができます。
ただし、中小企業者等以外の法人の設立1期目について、
平成29年4月1日以後開始する事業年度の場合は、適用を受けられません。
(7) この制度の適用を受けるためには、
雇用者給与等支給増加額及び控除を受ける金額を確定申告書等に記載するとともに、
その金額の計算に関する明細書を添付して申告する必要があります。
(旧措法42の12、旧42の12の5、旧措法42の12の2、42の12の4、
旧措令27の12の5、旧措令27の12の4、旧措規20の10、平成28改正法附則85、平成30改正法附則86、108)